超ISO企業研究会

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活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第5回 松本 隆

2016.06.06

 

 

「ISO 9001とTQM(総合的品質管理)の関係を考える」

 

 

つぶやき第5回を担当する松本 隆です。

現在、ISO 9001/14001の審査、並びにISO 9001、TQM、5S等に関するコンサルの傍ら、ビジネススクールで(標準化をビジネスに活かすための)「標準化経営戦略」という科目を、高専で「品質管理」という科目を担当しています。

 

これから、ISO 9001とTQM(総合的品質管理)の関係を考えるという、「古くて新しい問題」を1.~3.の視点で、少しつぶやいてみます。

 

 

1.ISO 9001とTQM

 

ISO 9001には、要求事項として 「shall: ~しなければならない」すなわち“What to do ?” はありますが、実現方法としての“How to do ?”はなく、それは実はTQMにあります。“ What  to do ? ”を示すのがISO 9001であり、「解決策」として“ How  to do ? ”を提供するのがTQMだと考えられます。その両者の共通のベース(基盤)は「社内標準化」であると言えるでしょう。TQMは、単なる概念(考え方)ではなく豊富・多彩な道具(手法)を含むことが大きな特徴です。

 

現在私は、ISO 9001とは審査やコンサルの現場で関係していますが、上記のTQMとの関係を考えると、TQMの考え方、手法がISO 9001の運用に大変役に立つと思います。

もちろん、このような考え方は特別なものではなく、それが出来ている組織も少なくありません。しかし多くのISO 9001認証取得の組織では、TQMの考え方・手法の有用性は認識されてないし、活用されていないのが現状でしょう。

 

 

 

2.「標準(化)」の定義

 

次に、ISO 9001とTQMの両者の共通のベース(基盤)としての「社内標準化」について、考えてみます。

以下に「社内標準化」の元になる「標準化」の国際的な定義と、旧JISの定義、そして日本品質管理学会の定義を述べます。

 

1)国際的な定義-JIS Z 8202:2006(ISO/IEC Guide2:2004)標準化及び関連活動―一般的な用語

 

与えられた状況において、最適な秩序を達成することを目的に、活動又はその成果に対する規則、指針又は特性を規定する文書であって、合意によって確立し、一般に認められている団体によって承認されているもの。

 

2)旧JISの定義-旧JIS Z 8101:1981(1999年廃止)

 

関係する人々の間で利益又は利便が公正に得られるように統一・単純化を図る目的で、物体・性能・能力・配置・状態・動作・手順・方法・責任・義務・権限・考え方・概念などについて定めた取決め。

 

3)日本品質管理学会(JSQC)の定義-『品質管理用語』

 

関係する人々の間で利益又は利便が公正に得られるように統一・単純化を図る目的で定めた取決め。

 

注:上記中の下線は、著者が強調のために施したものである。

 

 

旧JISや日本品質管理学会の定義に含まれている“統一・単純化”という表現は、国際的な定義にはありませんが重要です。“統一・単純化”という観点が抜けてしまうと、関係者の利益・利便や効果的・効率的な運営が得られないからです。

ISO9001では、決めるべき項目(what)は要求事項として明確になっているが、どのように・どの程度まで(how)決めればいいかは、その組織に任されているといえます。上記の「標準化」の考え方を抜きにして、「文書化」してしまうと、不必要に過重であったり、ルールとして機能しない「文書」だらけの品質システムができてしまいます。

例えば、品質マニュアルのような総括的な規程に簡単に記載すれば十分な場合でも、その下位文書としての「規程」を制定する。あるいは、フローチャートだけの手順書で必要・十分な場合でも、文章過剰の読みづらい「文書」となっていることがあります。

「文書化」(実は「文書過」)=「文章化」=「規定化」=「標準化」という誤解が多いと思います。

 

 

 

3.ISO 9001の本質的限界と2015年改訂

 

これまで述べたような関係は、ISO 9001の2015年改訂でも基本的に変化をしていません。変化をしていないというより、「事業活動とQMSの一体化」が強調されているとすれば、ISO 9001の運用におけるTQMの有用性は増しているとも考えられます。

ISO 9001:2015も、組織の品質保証(品質管理)の一般的なモデルを示しているに過ぎないという点で、2008年版とは大きく変わっていませんが、2008年版に比べるとかなり進化しているとも言えるでしょう。その例を以下に示します。

1)~3)の3項目について、それぞれ以下の①→②→③→④の順序で考えてみます。

 

1)①ISO9001の本質的限界:「管理システム」の評価である

(「技術」も「結果」も対象外)

→②問題点:「技術」のレベルを越えられない

→③従来の対応策:「技術」を大事にする取り組み

→④2015年改訂では?:「組織の知識」(固有技術)として明確にする(7.1.6)

 

2)①ISO9001の本質的限界:「適合性」の評価である

→②問題点:“やればよい”と目的を見失いがち

→③従来の対応策:目的指向をして成果を追求する必要

→④2015年改訂では?:「パフォーマンス」を評価する(9)

 

3)①ISO9001の本質的限界:「計画(P)」は完全であるという考え方

→②問題点:「計画」が悪ければ効果が上がらない

→③従来の対応策:「計画」の質を上げる活動

→④2015年改訂では?:「リスク及び機会」を明らかにして取り組む(6.1)

 

以上、古くて新しい問題を少し考えてみましたが、これは2015年改訂に対応する際にも考慮すべき基本的事項だと思います。

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