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メルマガ② QMSの本質

基礎から学ぶQMSの本質 第18回 第7の原則「人間性尊重と全員参加 」(2016-5-23)

2016.05.23

 

わが国の近代の品質管理の先生はアメリカであった。

第二次世界大戦に敗れ工業立国として多難な船出をする。

それが1980年には品質立国日本と世界の賞賛を浴びるまでになる。

日本の品質管理の特徴を端的に表現すれば、アメリカから学んだ科学性に人間に対する洞察を加えて独特の体系を築き上げてきた。

 

そして、今号のメルマガ筆者が最初に渡米したのが、実は1980年だった。そこでは、ジャパンバッシングの最中で、日本製の車や家電製品が、ハンマーで壊されているニュースが流れていた。

 

たしかに、米国車は、故障が多かった。日本車が人気だったのは、“頼りになる”という理由だった。たしかに、何もない高速道路だけの場所で、車が故障したら、命に関わる。

 

それから、35年が経過したが、わが国の状況はどう変わっているのか。

 

日本で、残念ながら、不祥事、事件、事故が多くなっている。

それも、日本の最も有名な企業にて起きている。

“結果を出す”というコトバのなかで、残念ながら人と人との間で何かが、うまく機能しなくなっている、一人ひとりに結果責任が押付けられている感が強い。

 

もちろん、そのような組織だけではない。

 

統制という意味での管理ではなく、目的達成のための活動という意味での管理を全員で行うという考え方に基づき、能力開発のための多様な施策、意欲向上策、自主管理の推奨、人間の弱さへの配慮などに意を尽くしている組織も多くある。

 

また、米国の企業は、“Japan as No.1”という有名すぎる図書にあるとおり日本のマネジメントを“科学”し、米国の風土に取り込むことを行っており、著者の感覚だが現状では、米国企業の方が、より“人間”の要素を積極的に取り込んでいると感じられる。

 

そこで、日本企業が、もしかすると、忘れかけているかもしれない、本来、我が国が培ってきた「品質管理は人質管理(ひとの質管理)」という考え、思想を、人間”性”尊重と全員参加というテーマに基づき、あらためて再認識したい。

 

文字数が多いので、2回にわたり、発行する。

 

 

 

 

■ 人財というリソースの特徴

 

まず、QMSにて適用するリソースとして、人財というリソースが、他とどのように異なるのかを述べたい。

 

一般的にQMSのリソースとは、QMSプロセスがその結果を出すために、必要に応じて提供され、使用されるものである。

 

しかし“人財”というリソースは、QMS活動のすべてにて必要とされる。

人がいなければ、QMSは、機能しない。さらに、人というリソースは、他リソースと異なる顕著な特徴がある。

ここでは、そのような特徴から4つを選択した。

 

 

ー 多様性

ー 変化

ー 感情

ー 言語(概念)

 

 

【多様性】

 

例えば、何かの同じ型式の工作機械を購入したとする。

すると、当然ながら、同じ型式なのだから、同じ振る舞いを、性能を発揮することを期待するが、人については、そのような期待はできない。

人は生き物であり、遺伝子により成立している。

遺伝子の均一性は、生物としての絶滅につながる。

 

多様性こそが人の本質であるとしたら、QMSは、その特徴にうまく対応することが必要となる。

 

 

 

【変化】

 

先ほどの工作機械を例にいれると、確かに老朽化という変化が生じるので、それに対応する必要がある。

しかし、人の場合は、できなかったことができるようになる、という成長という変化を遂げる。

もちろん、年齢により、手作業の能力は低下するかもしれないが、洞察、判断という能力はむしろ年齢とともに向上する。人は、学び続ける存在である。

 

 

 

【感情】

 

工作機械は、モノなので感情を持たない。しかしながら、人は、多様な感情を持ち、それら感情により人の行動や行為に影響がでる。積極的な行動が生まれたり、あるいは、とるべき行動が抑制されることもある。

 

 

 

【言語(概念)】

 

人は、言葉を使う生き物である。

コトバという現象を、別の表現でいえば、心象イメージ、概念となる。コトバを通じて人の頭のなかに、イメージが浮かぶ。

そのようなイメージと、表出されたコトバを通じて、人と人は、お互いの共通の認識を確認したり、差異を感じることができる。

思考である。

そのような思考のなかには、過去のこともあれば、将来のことも含まれる。

すなわち、人は、コトバを通じて創発し、将来像を描く能力を持っている。

 

本メルマガでは、そんな人の特徴を尊重・活用し、また、その弱さを克服・補完することでQMSの姿をできる限り描きたい。

 

 

以後は、組織が、いきあたりばったりではなく、それなりに計画的に、組織のQMSにて、人というリソースについて理解を深めていくための4つの場面を想定した。

それが、以下である。

 

ー 人財制度の確立と提供

ー 作業における取り組み(ヒューマンエラー防止)

ー 人の、自主的な取り組みの醸成と全員参加

ー 組織におけるコトバと概念の共有化(コミュニケーション)

 

 

 

■ 人財制度の確立と提供

 

組織が、ある仕事を担い、結果を顧客に提供するためには、人が必要である。

今後、人工知能が普及したとしても、人は不可欠な存在であるには違いない。

 

そこで、組織は、人を必要とするが、どのように人を集めるのか、また、どのように、人財となるべくその能力を高めるべきなのか。

 

一番よろしくないのは、恐らく、“忙しくなったから、とにかく人を集めましょう、仕事してもらいましょう”、ということだろう。こういう場合、どんな人を望んでいるのか、さえ、わからない。

 

そこで、そのような行き当たりばったりではなく、計画的な人財制度を、次のような要素を含みながら確立し、提供することが重要となる。

 

ー 求める能力像

ー 募集と採用

― 基本教育・能力開発

ー 能力開発

全員が参加する小集団活動

他社との相互交流

ー 最適配置

キャリア形成

待遇、チャレンジ、再配置

 

すなわち、人が入社する以前から、組織が必要とする能力像を明らかにした上で、その確保に取り組み、採用した人々に、基本的な教育と能力開発の機会を提供する。

 

また、社内小集団活動や他社との相互交流等を行い、自発的な取り組みや社外の取り組みから、良い方法をベンチマークするといったことを通じた、グループ活動やリーダーシップの体験を促し、個人の能力を引き出す。

 

さらに、組織としては、採用・能力開発の段階から、個々人に対してキャリア・アッププランを形成し、定期的にパフォーマンスを評価した上で、個人に適切な待遇、チャレンジ、再配置といった人々の多様性や変化に応じた対応を実施することが良いだろう。

 

このような、人財制度を、冒頭の【人的リソースの4つの特徴を】からみると、次のようなことが見えてくる。

 

 

ー 多様性     : 個性からの適正をうまくつかむ

ー 変化        : スキル向上支援、キャリアプランの提供

ー 感情        : 組織からの支援、サポートを受けている感覚

ー 言語(概念)       : 組織内部での円滑なコミュニケーション

 

(山上 裕司)

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