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基礎から学ぶQMSの本質 第11回 第2の原理・原則 「物事 に優先順位をつける重点志向」(2016-4-4)

2016.04.04

 

 

優先順位の話の初めに、80対20の法則

 

イタリアの経済学者パレート(1848~1923)が、19世紀のイギリスにおける所得と資産の分布を調査し富の分布の不均衡に法則性(20%の人が資産総額の80%を所有している)があることを、同時に、国や時代に関係なくこの不均衡が一貫して存在することを発見した。

これを、パレートの法則或いは80対20の法則と呼び、いろんな場面で応用されている。

品質管理の分野では、ジュラン博士が1954年日本科学技術連盟の招きにより来日し、講演を行った際、品質改善を追及するにあたり、問題は一様に分布しているのではなくひずんだ分布をしており、少数重要(Vital few)が全体に決定的な影響を与える。

取り組むべきは多数軽微(trivial many)な問題ではなく、少数重要問題であると説き、課題の重点順位づけが品質問題への取組方法の柱の一つとして普及してきた。

 

 

 

優先順位付け(選択と集中)

 

優先順位付けで最も身近な例がTime Managementだろう。

人が一生で手に入れられる時間の総和は限定されている、限定された時間の中で人生で成し遂げたいテーマにどれだけ集中するかで達成度が決まる。

優先順位付けに卓越した例がアスリートや芸術家にみられる、彼らは、人生の早い時点で目標を見つけ、その達成のために時間の大半を集中投入することで成功を収めている。

熾烈な競争環境下にある組織が、限られた経営資源を使って、刻々変化する状況の中で持続的に成功を追求するためには、優先順位付けは最も重要な課題の一つである。

組織が持続的成功を達成するためには、組織の特徴及び能力を勘案し、その時々の状況に適した優先順位付けによる選択と集中が不可欠である。

 

 

 

レバレッジポイント(作用点)

 

若くしてローマクラブの「成長の限界」のプロジェクトリーダーを務めシステム思考の権威でも知られるドネラ・H・メドウズ著作の「世界はシステムで動く」にこんな一説があった。

「システム思考とは、問題の根本原因が何かを見いだし、新たな機会を見つける自由を与えてくれる思考法なのです」。

「この世界が急速に変化しつづけ、ますます複雑なものになるにつれ、自分たちの前にある幅広い選択肢を管理し、適応し理解するために、システム思考が役に立つことでしょう」。

この本のテーマは、地球システムが抱えるグローバルな問題をシステム思考を基に幅広くとらえることだが、企業を一つのシステムと捉えると、多くのヒントが得られる。

課題を多く抱えた組織も、実は多くの選択肢を持っており、そのことに気付くことで、将来の展望に光明が見えてくる。

組織を持続的な成功に導くには、その達成のための重要ポイントすなわち作用点が存在し、それを選択し、集中できるかが鍵となる。

 

 

 

何が重要かを決める(能力の獲得があるべき姿)

 

何が重要かは「あるべき姿」に近づくのに何が最も効果的かを問うことになる。

製品・サービスの要求事項への適合の視点では、不適合が無いことがあるべき姿であり、取り扱うべき優先順位が高いのは全体に占める割合が多い不適合ということになる。

この場合、何が占有率の高い不適合かは、現場で起こっている製品・サービスの不適合を分析することで特定できる。

一方、持続的に成功するための価値創造システムは、変化に迅速に適用し、優位性を持続的に発揮する必要があり、そのあるべき姿は、競争優位を維持し続けるために備えなければならない特性、経営資源及びそれらを活かす能力の獲得である。

 

 

 

あるべき姿を認識する(特徴を活かした競争優位、Viatal few)

 

持続的成功のための価値創造システムにおけるあるべき姿とは、競争優位を維持し強化する能力を備えることである。

この能力は、組織の特徴及び固有の技術の組み合わせで構成され、組織の長期戦略の柱の一つとなる。

長期戦略は、組織の現状に将来の変化を考慮した上で、特徴及び保有する資源を勘案し、最も重要と決定した組織が提供すべき価値に基づく。

価値創造システムの成果と提供する価値との間にも80対20の法則は適用できる。

組織にとってのVital few(少数重要)の価値は、今現在何らかの形で競争優位を発揮している価値であり、売り上げや利益に対する貢献度の最高い製品・サービスが提供する価値ということになる。

組織が提供する中で最も競争力のある価値を特定し、その価値創造を支える能力を明らかにすることで獲得すべき能力の姿が現れる。

 

 

 

重要ではないものを捨てる(特徴づけされた価値創造システム)

 

過酷な競争環境ですべての面で競争優位を備えることは、限られた資源で競争している組織にとって必ずしも有効な戦略とは言えない。

組織の特徴や持てる能力を最も効率よく活用し発揮できる競争優位に集中して取り組むことが多くの、特に中小規模の組織の選ぶべき戦略である。

「価値は消費体験の中で認識される」は、マーケティングの神様とも称されSTP(segmentation, targeting, positioning)理論で知られらるコトラー博士の言葉。

価値創造システムの成果は、顧客に消費され満足されることで具現化する。

消費者は価値の選択の際に、そのプラス要素とマイナス要素を比較する。

比較の入り口として認識されるのがマイナス要素だが、最終的な消費に決定的な影響を与えるのはプラス要素である。

投入する資源が限定されている中で、組織が競争優位を獲得し、維持して行くためには、このプラス要素の価値を特定し、特定した価値の競争優位を維持し、持続的な創造を可能にすることに集中することが選ぶべき戦略であり、その戦略の展開ための基盤となる、特徴づけされた価値創造システムの構築・運営が重要となる。

 

(住本 守)

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