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活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第3回 平林良人

2016.04.01

 

ISO9001:2015年規格の序文には、「この規格には次の3つの概念がある」と述べられています。

-プロセスアプローチ

-PDCA

-リスクに基づく考え方

そして、プロセスアプローチが上位概念であり、その下にPDCAとリスクに基づく考え方があると書かれています。プロセスアプローチの概念はISO9001:2000年版で説明されていましたが、2015年版において強化されました。

 

このプロセスアプローチについての記述を読んで頭をよぎったイメージは次のようなものです。

 

 

「人生はプロセスである。」

 

急にこのようなことを言うと、何か大きな心境変化があったのではないかと思われるかもしれませんが、これはプロセスとは何かを考えたときの一つのメタファです。こんなイメージを持つのは年を取ったということでしょうか。

 

まず、プロセスには初めと終わりがありますが、人生にも当たり前ですが、生で始まり、死で終わるという初めと終わりがあります。

 

ただ、プロセスは目標を持って設計され、意図する結果がアウトプットされなければなりません。アウトプットされる目標が明確に設定されてはじめてプロセス全体が意味を持ちます。プロセスの目標が明確でなく、何のために活動しているのか分からないようだったら、そのプロセスは中止するか、変更しなければなりません。

 

それに対して、我々の生は我々の意図には関係なく始まり、すなわち気が付いたらこの世の中に存在しています。旧約聖書には、最初神は天地を創造し、「光あれ」と言われ土から人(アダム)を作り、あばら骨の一部からエバを作ったと書かれています。また終わりも目標に関係なくある時突然訪れます。

 

 

それでも、「人生はプロセスである」と言いたいです。なぜなら、我々の人生は、意図しない初めと終わりの中に、意図する初めと終わりがあると思うからです。

小学校に入学する、卒業する。中学校に入学する、卒業する。高校に入学する、卒業する。大学に入学する、卒業する。このあたりになってくると道は分かれて大学に入学せずに就職する人も現れてきます。大学を卒業して就職する人もいます。この辺からますます道は分かれます。就職してもすぐ離職する人、再就職する人もいます。結婚する人もいれば離婚する人もいます。子供の生まれる人もいれば死ぬ人もでてきます。

 

プロセスは期待するものがアウトプットとして得られなければなりません。そのため、プロセスを設計する時には何を得たいのか、まず考えなければならないのです。次にそのアウトプットを得るためにはどんなことをしなければならないのかを考えます。この思考の連続によって、プロセスを構成する一連の活動がデザインされてくるのです。その結果、最初に何が必要なのかも自ずと決まってきます。

 

一方、人生はこのようにはいきません。計画的にことを進めたいと思っても偶発的なことが多すぎます。自分ではコントロールできない環境変化もあります。そもそも感情を持つ人間は1週間たつと得たいものが変わってきます。得たいものが変われば活動も変えなければなりませんが、一度そのプロセスに乗ってしまうとそれを変えることは難しいです。変えたいと思っても簡単には変えられない理由も多く、それが人生とも言えると思います。

 

 

しかし、それでも「人生はプロセスである」と言いたいです。

 

学校に入る時、将来何をしたいのか考える人がいます。漠然と考える人、明確に考える人、詳細にステップまで考える人、人さまざまでしょう。100人いれば100通りの考えがあると思いますが、すべての考えに実は活動が伴うのがプロセスのコアです。漠然と考える人は漠然とした活動をイメージし、明確に考える人は明確な活動をイメージし、詳細に考える人は詳細なスケジュール化された活動を考えるでしょう。この活動を考えることがプロセスのコアであるというのは、時間の経過だけからは期待されるものは生み出せないからです。我々は心で思ったことは現実の世界で具現化することを経験的に知っています。どの程度具現化するかは別にして、心で思わなければ何も起こらないことを知っています。ただ、この心で思ったこと、すなわち考えたことを展開させ、進化させ、実行する、実践するなどいろいろな言い方はありますが、一歩踏み出すことこそが活動なのです。

 

 

プロセスの定義は「・・・一連の活動がある」としていますが、その最後の活動からのアウトプットこそが目標としていた得たいものなのでしょう。最後の活動からのアウトプットがプロセスの目標と一致していることが、まずは重要なことなのです。そして、この最後の活動には何らかのインプットがあるはずですが、このインプットはその前の活動のアウトプットであることがポイントになります。そのひとつ前の活動にはインプットがありますが、これはもうひとつ前の活動のアウトプットなのです。このように、最終の活動のアウトプットがプロセスの目標と一致していることを前提として、活動ごとのインプット、アウトプットを明確にしていくことがプロセスアプローチ設計のポイントなのです。

 

学校に入る時、将来何になろうかと考えたら、最後の活動をイメージします。例えば、国家資格を取得するというようなことです。この国家活動を取得するという活動のインプットは何であろうかと考えると、受験資格などが考えられます。ではこの受験資格を取得するというひとつ前の活動のアウトプットはと言えば受験資格獲得であり、その活動のインプットは専門知識の習得、あるいは経験の取得、人生経験の蓄積など国家資格の持つ専門性からいろいろなものになると言えます。このようにして、一番最後の活動から前の活動へとインプット、アウトプットをつなげて思考していくと、最終的に最初の活動を考えるところにきます。そこで最初のインプットが、すなわちどこを志望校にするのかが決まってくるのです。

 

 

組織におけるプロセスアプローチは、活動する環境条件を固定させることができるので、この設計はやり易いです。しかし、人生においては学校を選ぶばかりでなく、会社を選ぶ、伴侶を選ぶ、住まいを選ぶ、仕事を選ぶ、旅先を選ぶ、車を選ぶ、遊びを選ぶなどあらゆる選択に不確定要素が付きまといます。決して、組織がプロセスを設計するように、人は人生を設計できないのです。

しかし、ISOの主張するプロセスアプローチの概念の中には人生のノウハウとして応用するものが濃厚に入っていると思います。

(以上)

 

 

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