基礎から学ぶQMSの本質 第6回 品質を経営の中心に据える(2016-2-29)
2016.02.29
品質とは何かについて5回に渡って解説してきましたが,その最終回として,品質を経営の中心に据えることの意味,重要性について述べたいと思います.
■経営要素としての品質
一般的に,経営において考慮すべき側面,要素として,Q(品質),C(コスト),D(納期)がありますが,なぜこれほどまでにその1要素であるQ(品質)の追求を強く推奨しているのでしょうか?
それは,一見してCやDの問題に見えて,実はその根本原因はQに問題があることが多い,というのがひとつめの理由です.
例えば,前回(第5回)で話した品質コストに関していえば,d)外部失敗コストやc)内部失敗コストが多くかかってしまっているために,その製品全体のC(コスト)が問題になることがあります.また納期問題に関しても,工程内での不良発生によってある時期にお客様のニーズに合った製品を必要な数だけ準備できなかったわけであり,ここにも品質問題が潜んでいます.
逆に言えば,Q(品質)を上げることによって,C(コスト)やD(納期)の問題の多くを解決することができます.
“Q(品質)を上げれば,それに比例してC(コスト)も上がる”
このように誤解していませんか.
実は,Q(品質)を上げることで外部や内部の失敗コストを大幅に低減し,その結果としてその製品の品質を維持するためにかける必要のある総費用を低減できます.
つまり,
“Q(品質)を上げれば,C(コスト)は劇的に下がる”
というのが正しい理解です.
確かにQ(品質)を維持するための最低限のコストは必要ですが,決してC(コスト)とはトレードオフ関係ではなく,両方を同時に達成することが可能なのです.
■品質と利益の関係
品質を経営の中心に据えることのふたつめの理由は,ビジネスを運営していくために最も大切な“利益”への貢献度合いが大きいためです.
皆さんもご存じのとおり,利益の計算式は
利益=売り上げ-原価
です.
品質の良い商品・サービスだけを提供できれば,無駄がなく“原価”を抑えることができます.
つまり,安上がりにできるということです.
一方で,品質の良い商品・サービスというのは,顧客のニーズを満たしているのですから,顧客からの反応が良く,よく売れていきます.
それだけではありません.
他社に比べて“高値で”売れるのです.
以前に出した例でいえば,スターバックスは“ひとりでホッとできる空間”という顧客価値を提供することによって,通常の3倍以上の値段もするコーヒーが売れています.
また,(私も妻に贈りましたが)美容電化製品としてのドライヤーは,街中の電気量販店の最安値で2千円弱で買えますが,それが“家で気楽にエステができる”という顧客価値を訴えてそれに適した商品にすることで,その10倍の2万弱の値段での販売に成功しています.
いずれの例も,これまで顧客自身でさえも気が付かなかったようなニーズを満たす商品(=品質の良い商品)を市場に送り出すことによって,市場価格よりずっと高値で売ることができます.
これは,“売り上げ”に大きく貢献します.
以上をまとめますと,品質を経営の中心に据えることを強く勧める理由は,
1)品質を上げることが他のあらゆる経営要素の問題解決につながる可能性が大きい
2)品質を上げることで原価が下がり売り上げが上がる,つまり利益を多く生み出す原動力である
ということになります.
今回で“品質”に関する解説は終了し,次回からは“管理”の話題に移りたいと思います.
(金子雅明)