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基礎から学ぶQMSの本質 第4回 品質の捉え方(2016-2-15)

2016.02.12

 

品質の良し悪しは顧客のニーズを如何に満たしているかにかかっているわけですが,その前提条件として,そもそも顧客は誰か,何を提供しているのかについて解説してきました.

 

基礎から学ぶQMSの本質シリーズ,第4回目は“品質の捉え方”について紹介したいと思います.

 

 

 

■当たり前品質,魅力的品質

 

最初は,1984年に狩野紀照先生らによって提唱された当たり前品質,魅力的品質という考えです.

これは,品質が顧客の心理的満足度に与える影響の違いを考慮した品質の捉え方であり,提唱されてから30年以上経っていますが,今でも多くの企業で用いられている有用なものです.

 

 

“当たり前品質”とは,商品の物理的な性質が満たされていても,顧客にとってそれは当たり前であり,心理的な満足度の向上には影響しないが,不十分であると大きな不満を感じるような特性のことを指します.

例えば,自動車におけるブレーキ故障などは現代では無くて当たり前であるが,このようなことが購買後すぐに発生してしまったら,顧客の不満足度に直結することになります.

 

 

一方で,“魅力的品質”とは,物理的な性質が多少悪くてもそれほど不満を感じないが,充実させることで顧客の満足度が大きく向上する特性のことを指します.

例えば,BMWが訴えている“走り抜ける爽快感”などが当てはまります.

 

 

これらに関連して,物理的な性質の充足度に比例して,顧客の満足度が上がったり,下がったりする特性のことを“一元的品質”と呼び,代表的な特性には燃費などがあります.

また,充足度合に全く関係しない特性のことは“無関心品質”と表現します.

 

 

これらの4つの品質区分という考え方は企業経営にとってとても重要な示唆を示してくれます.

例えば,魅力的品質は売り上げ増に影響を与えますし,当たり前品質は満たされないと市場クレームの発生につながってしまうのです.

つまり,各企業は顧客にとって当たり前品質の特性を確実に満たしつつ,市場での競争力強化のために魅力的品質の側面を磨いていくことが求められます.

 

 

ただし,ここで注意すべき点がひとつあります.

それは,時代時代によってどの特性が魅力的品質や当たり前品質となるのか,言い換えれば,お客様の心理的な満足度への影響度合いが変化する,という点です.

例えば,今では自動車のブレーキ故障などは当たり前品質でしたが,一時期前においてはそれが起こることが当たり前であり,ブレーキ故障がないことが実は魅力的品質であった時代がありました.

日本の自動車メーカーが初めてアメリカの自動車市場に打って出てそのシェアを大きく勝ち取った一つの要因は,この点にあったと言われています.

 

 

 

■業務,仕事の質

 

よく考えてみれば,顧客に対して最終的に品質の高い商品・サービスを提供するためには,それを提供するために必要な,企業内部で実施すべき企画,設計,製造などの業務や関連する仕事すべてをきちんと実施しなければなりません.

 

“きちんと実施した”というのは非常にあいまいな表現であり,きちんと実施できたかどうかの判断は,その業務や仕事の目的に照らし合わせてより客観的になされるべきだと考えられます.

その点を強調するために用いられる品質の捉え方として,“業務の質”,“仕事の質”があります.

 

 

これまでは,品質と言えば,企業が最終的に顧客に提供する“商品・サービス”の質,ということを指していましたが,さらにさかのぼってそのような良質な商品・サービスを提供するためには良質な業務や仕事が必要だ,という考えに進化したと言ってもよいでしょう.

 

繰り返しになりますが,質(品質)という言葉を用いるときには,そこには常に顧客と商品・サービスのふたつが付いて回ります.したがって,“業務の質”と表現したときには,

 

 

・顧客=自分が担当する業務の結果の受け手

・商品・サービス=自分が担当する業務の結果

 

 

と考えていることになるのです.

自分が担当する業務の質を議論する際には,自分はこんなにがんばったんだ!と感情的に訴えるのではなく,あくまでもその質の良し悪しは,自分が担当する業務の結果が,その受け手である社内の別の部署や人(=内部顧客)にとってどのように評価されているかによって判断されるべきです.

 

 

ISO9001を認証取得する企業は必ずと言っていいほど,“品質保証体系図”を作成しているはずです.

そしてこの中には,良質な商品・サービスの提供に必要なすべて業務が列挙され,どの部署がどの業務を担当し,部署間の関係が明確に示されています.

つまり,自部署はどのような業務を実施する必要があるのか,その業務の結果の受け手はどの部署であるかを社内の全職員に周知するための図であり,“業務の質”という考えを会社内で具現化するためのひとつの重要な道具なのです.

 

 

以上から,品質管理は商品・サービスの品質を維持し改善することを直接的な目的にしていますが,それを介して企業体質の改善の道具としても発展してきたのです.

 

(金子雅明)

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