活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第1回 住本守
2016.02.09
「超ISOメンバーによるつぶやき」というタイトルで月1回の情報掲載を始めます。
毎月第1金曜日にホームページへのアップとメルマガ配信を同時に行う予定です。
ご期待ください。(事務局)
それでは第1回です。
その第1回目を担当する住本です。
筆者はソニー株式会社に30年勤務し、ソニー勤務時代の前半15年は製品安全を、後半15年はCS及び品質保証部門で、Six Sigmaの導入やCS キャンペーンの推進などを担当しました。
2003年に退職した後は、TC176国内委員会やCASCO国内対応員会などを通し、品質マネジメントシステム及び適合性評価の分野で活動を行っています。
ソニーを含め日本の電機業界はグローバル化及びデジタル化の大波を受け大変困難な時期を経験しました。
筆者も事業環境の変化のスピードとその影響の大きさを身に染みて実感した一人です。
今日は、持続的成功、競争優位及びマネジメントシステムについて、最近感じたことをつぶやいてみたいと思います。
雑誌で「競争優位の終焉」(リタ・マグレイス著)を紹介した記事を読みました。
曰く、デジタル化とグローバル化に伴う競争激化により、企業はもはや優位を持続できず、従来の競争戦略論では、魅力的な産業で魅力的なポジショニングを行えば、高い参入障壁の下でポジションを守れるというものでしたが、グローバ
ル化や参入障壁の低下によって、企業は競争優位を保てなくなっています。“持続的競争優位“ではなく、“一時的競争優位“を重ねて成長につなげる戦略を取らざるを得なくなっている、という内容でした。
“一時的競争優位“を重ね成長につなげるという概念は、超ISOが提唱している“持続的成功“そのものです。
問題は“一時的競争優位“を重ねるために何を行うかです。
「競争優位の終焉」では、“一時的競争優位“を重ねて成長につなげる戦略の基となるのは、“一貫した企業文化“とのこと。“
一貫した企業文化“は、“一貫した組織運営“により育成されます。超ISOは、組織能力を軸にした組織運営のモデルを提供しており、組織が、競争優位を発揮するために、その特徴と能力を十分に活かすと同時に変化に対応して、競争優位
を強化する組織運営のマネジメントシステムモデルです。
マネジメントシステムの特徴は、PDCAをベースとしたフィードバック機能が組み込まれていることにあり、誘導ミサイルのごとく機能します。
ターゲットとミサイルの位置情報のギャップを継続的に修正することで、誘導ミサイルは確実にターゲットをヒットします。
マネジメントシステムでは、目標との乖離がその機能を発揮する時の駆動力となり、目標となる“あるべき姿“が明確な場合にのみ、本来の機能を発揮します。
ここで言う“あるべき姿“とは、戦略レベルでは提供する顧客価値、ターゲットとする市場、競争優位となる特徴や技術を明確に定義した“成功のシナリオ“であり、活動レベルでは“成功のシナリオ“を実現するために設定した目標ということに
なります。
「ISO 9001を導入したが少しも良くならないと」いう声を度々耳にします。多くの場合、「規格に適合すれば成果が得られるはず」という発想から、ISO 9001の要求事項の中に先に述べたシステムの駆動力が示されているかの如く振る舞いま
す。
形式的に規格に適合しても、マネジメントシステムは本来の機能を発揮しません。
規格は標準的なモデルを提示しており、モデルに組み込むコンテンツは、組織が“あるべき姿“を描くことにより決定されるからです。
又、システムの駆動力となるギャップは“あるべき姿“と現場の比較によってのみ得られます。
問題は二つあり、一つは“あるべき姿“を描けていない、すなわち考えていない、二つ目は現場を把握していない、すなわちマネジメントシステムが事業と乖離していることです。
フィードバック機能を備えた、別の表現を用いると誘導機能を備えたマネジメントシステムが期待した成果を生み出さないということは、二つの内のどちらか或いはその両方の欠如が原因であり、真の意味で規格に適合しているとは言い難
いのです。
「ISO 9001を導入したが少しも良くならない」という前に、「規格に適合すれば成果が得られるはず」から、「マネジメントシステムを期待通り機能させることで規格に適合する」と発想を変える必要があると思います。
最後に、こうつぶやいて結びといたします。
「ISO 9001をはじめとするマネジメントシステム規格は、組織から考える機会を奪うのではなく、組織に考える基盤ときっかけを提供する規格である」