超ISO企業研究会

最新情報

  • HOME >
  • 新着 >
  • 本日から、品質部門配属になりました 第28回 『量産品質の保証:量産プロセス管理』(その2)   (2020-11-30)

新着

本日から、品質部門配属になりました 第28回 『量産品質の保証:量産プロセス管理』(その2)   (2020-11-30)

2020.11.30

②変更管理、変化点管理

変わっていることを発見するだけではなく、変わっていることが分かっているならば、先手で対策を打って管理しようとするのが「変更管理」です。4M1E の変化があらかじめ分かっているのなら、この影響の評価を行い、そのための未然防止対策を確実に打っておこうという方法です。

さらには、この変更を、もっと小さな規模の変更(すなわち、変化)の発生した時点で、これに対する処置(対策)を決めて、この情報を現場で「見える化」して、こまめに対応をしていく方法が「変化点管理」です。

中山さんは、工程で発生するトラブルの多くは、この変更したときの管理や、変化を軽視したり見逃したりしていることから発生していることは実感していましたので、これを強化しようと考えました。特に、「変化点管理」を導入して、「変化点管理ボード」を現場内に設置してはいるものの、3ヶ月前の変化点がそのまま掲示されていたり、把握すべき変化点が素通りしてトラブルにつながったりした例もありました。

そこで、このボードには、完了の時期とその結果を記述することと、変化のタイミングとして、昔から特に安全管理で言われていた「3H」(はじめて、変更、ひさしぶり)を明確にして、運用することにしました。

     
    5.工程改善

工程改善は、現場の人たちを含めた全員で行うのがよいのです。なぜならば,問題の真の姿は当事者が一番よく知っているからです。そしてもっと大事なことは、現場の作業者には創造性が要求されることになるということなのです。“言われたことだけを忠実に行う”という枠を越えてもよいということは大きな変化であり、自主性,主体性,積極性が醸成されることにより、職場の中での自分の仕事の位置づけを深く理解できるようになるのです。さらには、生産に用いる設備,治工具,計測機器などの,動作原理,構造などを理解するようになり,自分たち自身が主体性をもって問題解決を行うようにもなるのです。

工程改善を行うときの基本は、次のような「QCストーリー」を適用して問題解決をしていくことです。

①テーマの選定、②改善目標の設定、③組織作り、④実状調査、⑤原因解析、⑥対策案の検討、  ⑦対策の試行、⑧標準の改訂

そして、目的に合った原因分析の手法を適用させることです。主な手法には、特性要因図、なぜなぜ分析、各種統計手法(相関分析、検定・推定、分散分析、多変量解析など)などがあります。

特性要因図は、石川先生の考案した世界に普及している優れた手法で、QC手法の最初に学ぶ原因解析手法です。チームで知恵を出し合って要因を洗い出していく過程が大事で、不良とその原因が整理され、知識が共有化されてとても有用です。

なぜなぜ分析は、原因追求を論理的に展開していくことで、不良発生のメカニズムが可視化されていき、このまま組織の知識が蓄積されていきます。また、“なぜなぜ”と辿っていくことにより、先入観にとらわれない原因追究ができます。

統計的手法は、上記の原因と結果の関係を、事実で客観的につなげるために有用であり、目的を明確にして使うことが重要です。最近では、コンピュータの計算で手軽に使えるので、大いに活用したいところです。ただし、どんなに便利になっても忘れてはならないのは、現場、現物、現実で原因を追求すると言うことです。手法におぼれないように気をつけなければ行けません。

また、その手法がどんな手法でもあれ、再発防止対策を打つときに忘れてはならないのが、「水平展開」をすることと、「歯止め」をしっかりと行うことです。先日も、こんなことがありました。通常はA工法なのに、一部B工法をしている製品があり、そのB工法の特別な作業方法に原因があることがわかり、この作業を改善しました。そこで、同じ工法をしている一部の製品にも同じ対策を打ち、「水平展開」は行いました。しかしながら、今度同じ製品の注文が入ったときに、これも改善をした作業で実施できる「歯止め」が掛かっていませんでした。

中山さんは、特に現場の改善は、現場の人たちが自分たちの意志で積極的に取り組むことがなによりも大事だと考えています。A社では、小集団活動が行われているのですが、現場の改善は一発で大きな効果を上げることではなく、小さな改善でも良いから継続して積み重ねることです。このことにより、標準を守ることが根付き、結果として、長い目で見ると大きな成果につながるのです。

品質保証部の仕事の一つとして、小集団活動の推進事務局もありますが、この考え方を鮮明にして推進していこうと思っています。また、改善を実施するのに、必要な道具(手法)をもっと習得してもらうための教育の計画も、社内勉強会も含めて、念入りに作成しました。

 

    ●量産プロセスでの品質部門の役割発揮ポイント(1)

中山さんのこれまでの仕事ぶりから、ここでいったん、量産段階での、品質部門として果たす役割のポイントを整理しておきましょう。今回も、当メルマガ第4回、及び、第9回で説明している、“性格が異なる4つの役割”に分けて説明します。

① 体系構築・管轄

「新たなしくみを作るとか、既存のしくみの運用状況を監視し、改善・強化する」対象として、以下の事項を特に留意します。

・現場で使えて、組織の知識として役に立つ「作業標準作成と運用のしくみ」

・「QC工程表」に記述された事項の運用と維持

・工程内での異常発生に対する報告と処置のシステム

・失敗を繰り返さないための「品質情報伝達システム」

・失敗事例が、「組織の知識」として保存され、再利用できるしくみ

・4Mの変更が確実に管理される「変更管理」のしくみ

・現場の「変化点」(「3H」(はじめて、変更、ひさしぶり)を確実に管理できるしくみ

・効果的な(真の原因が追求され、水平展開や歯止めが確実に行える)是正処置のしくみ

・「工程改善」や「予防処置」を行ったときの、影響評価や効果の促進を図れるしくみ

③ 事務局的ライン業務

「正式な『事務局』として機能したり、情報提供をしたり、そのための『機会』を設定したり、日常の業務の中で働きかける」対象として、以下の事項を特に留意します。

・品質管理委員会(品質会議など)の事務局として以下の事項

・工程管理方法の維持・改善(管理図などの運用方法の奨励を含む)

・是正処置や未然防止対策の進捗把握とその管理

・小集団活動の事務局として以下の事項

・必要な道具(手法)習得の機会を設定(社外教育、社内教育)

・改善進捗,提案進捗などの状況把握とその管理

②主担当ライン業務と、④経営参謀的業務については、今回までには、まだその対象として特には、出てきませんでした。

「量産品質の保証:量産プロセス管理」の第2回目は、まずは,ここまでです。次回は、最近の課題となってきている「ヒューマンエラー対策」と「検査」のお話をします。

 
 

(丸山 昇)

一覧に戻る