本日から、品質部門配属になりました 第18回 『企画品質の保証』(その4) (2020-09-21)
2020.09.25
- 8.企画における品質部門の役割
これまでに説明しました製品・サービスの企画活動の主管は企画・開発部門であることが一般的ですが,その中において品質部門で果たすべき役割を最後に説明したいと思います.それには,
8-1.企画プロセスの運用支援
8-2.企画プロセスにおける節目(State gate)管理
8-3.企画プロセスの改善及びその支援
の3つがあります.
8-1. 企画プロセスの運用支援
8-1では,QA体系図に最上流に位置する市場調査・分析,研究開発,製品・サービスの企画における運用を支援します.
ひとつには,QA体系図に示された「企画」フェーズに係る規定,ルール,帳票等の改廃管理です.市場調査・分析にしろ,研究開発や製品・サービスの企画にしろ,品質保証を組織として確実に行うために従うべき規定,規準,規格,手順・マニュアルなどの文書類を特定し,それを作成し,正式な文書として登録し,いつでも参照できるように維持管理しておくことが必要です.
ふたつめは,QA体系図に整備した企画に関わる文書類に沿って,実際のプロセスが確実にかつ効果的に実施されるように支援することです.例えば,市場調査・分析では顧客調査協力,データの集計・分析支援,研究開発や製品・サービスの企画では各種イベントや会議の設定,調整,運用サポート,複数部門にまたがる問題の調整・仲介,連携支援などがありえます.
みっつめは,企画に関わる手法・ツールの活用支援です.先に述べた通り,市場調査・分析ではPEST分析,マイケル・ポーター氏による業界分析,行動観察法,QFD,商品開発七つ道具などについて企画関連部門が使いこなせるように,助言・指導,教育(講習会)の実施,解析ソフトの導入とその環境整備などを行うこともあります.
8-2. 企画フェーズにおける節目(State gate)管理
QA体系図では,最終的に顧客に品質保証しなければならない製品・サービスの品質特性から逆算して,QA体系図内で表現された一連のフローの中で,どの段階でどのような品質を保証しなければならないか,そのために,各経営機能(例えば企画,設計,量産・・・)の段階で何を対象にどのような判断基準で評価・レビューするかについてgate機能を設けます.これを節目(State gate)管理といいます.このためのレビュー・移行判断会議の主催は品質部門であることが多いです.したがって,品質部門は節目管理としてのレビュー・移行判断会議の運営を適切に行うとともに,その会議の中で適切な判断が行われたかどうかをチェックする役割があります.
レビュー・移行判断会議の運営においては,QA体系に規定された会議運営規則やレビュー対象,判断項目・判断基準に沿って運用していきますが,そのレビューや判断を行うために必要なインプット情報が過不足なく揃っているか,問題点を検知でき得る知識・経験を十分に有するメンバーが出席できるようになっているか,会議の前に既に把握している問題に対してはその解決策が提示されているかなどをチェックする必要があります.
適切な判断が行われているかどうかについては,ニーズの把握→ニーズから仕様への展開→製品仕様の決定という一連の流れについて,過不足なく論理的に検討されているかをトレースしていきます.例えば,(QFDを用いた)製品・サービスの企画においては,以下のようなことを確認するのが良いでしょう.
-
・要求品質展開表:抜け・漏れや曖昧さがなく,展開レベルがあっているか.この展開表を作るための
インプット情報の入手先やデータの適切性,妥当性は大丈夫か.
・品質表:重要要求品質の仕様への展開漏れがないか,両者の関係性についての根拠を明示している
か,類似の過去の知見・経験(過去トラ)が確実に盛り込まれているか.
・品質特性値:顧客の重要度や競合との比較結果を踏まえて決定しているか.技術的に実現可能かどう
かを検討しているか.
・事業性:市場規模,販売価格,生産及び販売・アフターサービス体制,原価目標値等が検討され,
事業性が適切に検討,評価されているか.
・当該プロジェクト:当該開発プロジェクトのQCD等の目標値が設定されているか,その目標値は経営
方針・目標との整合性からみて妥当か.当該開発プロセスにおける重点管理項目が明確になってい
て,その対応策が明示されているか.
8-3. 企画プロセスの改善及びその支援
企画プロセスの主管は企画・開発部門であることから,企画プロセスの改善も企画・開発部門が主体的に行うべきですが,品質部門はそのための支援,促進を行うべきです.例えば,品質部門が市場・フィールド情報を収集して企画部門に提供することで,市場での顧客の実際の使われ方や環境条件と,企画段階で想定したそれらとの差異,違いがあるかどうかを検証可能です.企画段階で想定した使われ方や環境条件が,実際の状況よりもかなり厳しく設定されているのであれば,それは過剰品質とわかるため,製品の原価低減に大きく貢献出来うる可能性もありますし,そもそもそのような差異が生じた理由を企画プロセスに求め,次の新製品・サービスの企画では同様な事態が起きないように改善することもできます.
また,4-3の新用途開発でも述べたように,思ったよりも売れすぎてしまった製品・サービスの利用状況データを収集し企画部門に提供することでも,新たな用途を発見し,次の新製品開発につながるかもしれません.いずれにしましても,企画プロセスの改善を支援するために必要な情報を特定し,これを品質情報システムに組み込んでおくことが必要でしょう.
また,企画プロセスの節目管理は品質部門の管轄であるため,企画段階で見つからず,その後の設計・開発以降のフェーズで発覚した,企画に起因する問題点を積極的に把握し,企画段階における節目管理でのレビュー対象,判断項目・基準の追加・変更,会議運営規則の改訂を行うことが重要となります.
(金子雅明)