本日から、品質部門配属になりました 第1回 はじめに (2020-05-18)
2020.05.18
ある会社での朝礼の場面で。
「皆様おはようございます。本日より品質保証部勤務を命じられました磯子と申します。入社して15年、ずっと工場勤務を続けて参りましてこの度初めての本社勤務。非常に緊張しておりますが、どうぞ皆様よろしくご指導ください。」
「パチパチ(皆からの拍手)」
「せっかくの機会ですので、もう一言申し上げさせていただくと、約4年前にISOの内部監査員研修を受け、今まで二度ほどISO内部監査員としての経験もさせていただきました。研修の時に学んだISO 9001はどうにもとっつきにくいと思って実は敬遠していたのですが、今回、品質保証部異動の内示を受けたことをきっかけに当時受講した際のテキストを引っ張り出して、ISO 9001の規格の勉強をもう一度自分なりにして参りました。改めて読み返すと、ずいぶんいろいろなことが規定されているな、と感じるとともに、わが社の品質マニュアルも基本はISOに則って書かれており、それに対して実際の業務がその通りできているかどうかを確認していくことが品質保証の仕事としてとても大事なことだな、と理解できたと思っております。まだまだ皆さんのようにはISO9001の内容を理解できているとは思いませんが、ぜひとも早期に皆さんのお力になれるように努力を重ねていきたいと思います。なにとぞよろしくお願いいたします。」
「パチパチ(より一層の皆からの拍手)」
さてその5分後、
小部屋で品質保証課長(品川さん)と品質保証部長(管野さん)がこんな会話をしていました。
「品川さん、異動で新たに入ってくれた磯子君、しっかりとした挨拶をしてくれて頼もしい限りだが、指導よろしく頼むよ」
「はい管野部長、了解いたしました。一方で、部長のおっしゃりたいことはもう少しあるということですよね」
「さすが品川さん、察しがいいね」
「まじめな人物が配属になる、とは人事からも聞いていましたが、確かにそうですが、ISO 09001を一生懸命復習してきました、ということだけでああも堂々と挨拶されてしまうと・・・。入社2~3年の若手なら大したものだな、と言ってあげたいところだが、15年もやってきている中堅どころの社員ですからね」
「まあまあ、そう嘆いてばかりでは先に進まないから、改めてどうだろう、もしかすると磯子君もわが社の品質保証、品質管理のレベルが高まっていないことの犠牲者の一人かもしれないよ」
「えっ、部長どういうことですか?」
「いやね、彼は彼なりに会社から指示された仕事や教育内容を一生懸命習得しようと頑張ってきたのではないかと思うんだよ。しかし学ぶ側だけでなく、教える側もISO 9001だけ教えておけばまずは大丈夫、という慢心があったのではないか。人の振り見て我が振り直せ、ではないけど、今まで我が部主催の内部研修のメニューとかをつらつら思い返しながら考えてみたわけさ」
「はい、それで何かお気づきになった?」
「まあ、そういうことだな。我々の研修企画もこの10年くらいを振り返ってみるとISO 9001が主軸になったものになっている、と思えないかい。過去の記録をめくってチェックしたわけではないが、あくまで私が赴任する以前のものもどこかでメニュータイトルをチェックしたときに、ある時期からISO 9001という言葉がずいぶん登場しているな、と思った記憶が蘇ってきたんだよ。そもそも品質とは何か、品質管理・品質保証とは何か、標準化とは何か、という基本事項をしっかり社内研修で皆に伝えることができているか、そういった部分がおろそかになってうわべばかりを追う研修メニューになっていなかったか、と気になったんだなあ」
「確かに、こうやって改めて問題提起を受けると私も心配になってきました。研修企画は現在品質保証係長にかなりの部分を任せてしまっていて、私自身もあまりそこに問題意識をおいていませんでした。ちょっと調べて改めてご相談に乗っていただきたいのですがお時間いただけませんか」
「もちろんだ」
「では来週月曜日の午後によろしくお願いします」
さて、翌週の月曜日、再び品川さん(品質保証課長)と管野さん(品質保証部長)が会議室で向き合うなかで、
「部長、大変お恥ずかしい状況ですが、係長の大野君も研修メニューはISOの理解を深めるようにすればよいのですよ、といってそのスタンスで研修企画を進めていました。私自身も甘い認識でとらえていました。申し訳ありませんが、これからもう一段深掘りするべく彼と共に企画を練り直します。初歩的な部分から、品質経営をそれなりに深掘りしたところまで入れ込みたいと考えているもので、申し訳ありませんがあと2週間お時間いただいて、練り直した研修企画についてのご相談をさせていただきたいと思うのですがよろしいでしょうか」
「そうか、やはり心配は当たってしまったようだね。いまから磯子君のためにも挽回を図ろう。では2週間後で構わないからよろしく頼むよ」
「はい」
長々と失礼しました。超ISO企業研究会がお届けする新メルマガシリーズ、
題して「本日から,品質部門配属になりました」
上記の会社での会話はあくまでフィクションで、実際にあった話ではありませんが、このような会社の品質部門の担当の方から私共がご相談を受けた際には、ぜひともこういった観点で教育プランを練ってほしい、という思いを形にするシリーズにしたいと考えております。
本メルマガシリーズをご愛読の皆様であれば、自分であればこのようなアドバイスをするぞ、と思われる部分も色々あることでしょう。
その認識で問題ないかどうか、というチェックのためにこのメルマガを毎週ご活用いただければ私たちも嬉しい限りです。
本研究会メールマガジンで過去から一貫したポリシーとも言えますが、ISO 9001という狭い枠組みにとらわれたものではなく、あくまで日本企業がISO 9001は誕生する前から培ってきた品質に関する知見を改めて整理していくものと捉えていただければ有難く存じます。
早速次週から新テーマの本編スタートになります。
どうぞ楽しみにお待ちいただければと思います。